「国内取引所から海外取引所へ仮想通貨を送金しようとしたら、送金先の一覧に取引所の名前が無い」「送金がエラーになる」という状況の多くは、2023年6月1日に施行されたトラベルルール(暗号資産の移転時に送付人・受取人の情報を通知する義務)への各社の対応によるものです。国内取引所は事前に審査した送付先だけを選択式で表示する方式に順次切り替えており、一覧に無い海外取引所へは直接送れません。
この記事では、金融庁の資料でトラベルルールの仕組みと対象法域を確認したうえで、bitFlyer・Coincheck・GMOコインの公式FAQにもとづく各社の方式、当サイト掲載のMEXC・BingXへ送るときの確認手順、自分のウォレット(プライベートウォレット)を経由する場合の注意点を、2026年9月22日時点の情報で整理します。送金制限を「回避」する方法ではなく、規則の範囲内で確実に送るための確認手順です。
トラベルルールとは|2023年6月1日施行・通知義務の対象法域
トラベルルールは、犯罪による収益の移転防止に関する法律(犯収法)の改正により2023年6月1日から施行された規制で、暗号資産交換業者(VASP)が利用者の依頼で暗号資産を移転する際に、送付人と受取人に関する情報を、受取側の暗号資産交換業者へ通知することを義務付けるものです。FATF(金融活動作業部会)が各国に導入を求めている基準にもとづき、暗号資産の取引経路を追跡できるようにすることが目的です(金融庁・2023年5月26日公表の改正政令)。
通知義務の対象は、日本の通知義務に相当する規制が定められている法域(通知対象法域)に所在する外国業者への移転に限られます。金融庁が2026年5月に公表した資料では、アメリカ合衆国、英国、シンガポール、香港、大韓民国、スイス、カナダ、アラブ首長国連邦、ドイツ、フランスなど58法域が対象で、これにアンギラ、オマーン、キューバ、ドミニカ国、ボツワナの5法域を追加する告示が2026年8月3日から適用され、対象法域は63法域になっています(Coincheckの公式FAQも2026年8月3日時点の対象法域一覧を掲載)。セーシェルなど、多くの海外取引所が所在地としている法域は、この63法域に含まれていません。
対象法域に所在しない業者への送付は法令上の通知義務の対象外ですが、各取引所は自社の審査で送付先を制限しています。bitFlyerのように「非通知対象法域」の取引所もリストに載せたうえで、リストにある取引所にだけ送付できるとする方式があるため、実際に送れるかは各社のリストで確認する必要があります。
なぜ送金できないのか|通知システム(TRUST・Sygna)と送付先リスト
国内取引所がトラベルルールの通知に使うシステムは主に2つあり、Coincheckは「TRUST(Travel Rule Universal Solution Technology)」、GMOコインは「Sygna Hub」を採用しています。通知対象法域の業者同士でシステムが異なると通知ができないため、GMOコインの公式ページは「送付できない宛先」として、国内のbitFlyer・コインチェック・Crypto Garage・Binance Japanと、海外のBitrue・Bybit・Gate.io・Kraken・Coinbase・MEXC・OKX・Upbit・ZOOMEXを例示しています(通知対象法域に所在するかどうかにかかわらず、各社の審査で個別に制限されています)。国内3社の方式を公式情報で整理すると次のとおりです。
| 取引所 | 方式 | MEXC・BingXへの送付 | プライベートウォレット |
|---|---|---|---|
| bitFlyer | 2025年7月30日から、事前に審査した「暗号資産送付先リスト」から選択する方式。リストにある取引所・金融機関にのみ送付可能 | MEXC(セーシェル・非通知対象法域として掲載)はリストにあり送付可能。BingXはリストに無い(2026年9月22日時点) | 送付可能(グループBの暗号資産) |
| Coincheck | TRUSTを採用。送金先の登録時に、送金できるサービス名だけが表示される | 登録画面の一覧で確認する(公式FAQに個別の取引所名の記載はない) | 公式FAQの記載に従う |
| GMOコイン | Sygna Hubを採用。Sygnaを利用する国内業者、通知対象国・地域に所在しない業者、プライベートウォレットへ送付可能 | MEXCは公式ページの「送付できない海外の暗号資産交換業者(例)」に名指しで掲載されており送付不可。BingXは公式ページに記載なし(送付できる宛先は通知対象国・地域に所在しない業者等だが「当社判断により断る場合がある」と明記) | 送付可能(当社判断により断る場合あり) |
※ 各社の対応は変更されます。送金前に必ず各社の最新の案内と、実際の送金画面に表示される送付先一覧を確認してください。
bitFlyerの送付先リストは、通知対象法域(日本を含む)に所在する取引所として国内のbitFlyer・Coincheckと、海外のbitFlyer USA・coinbase・KRAKEN・crypto.com(シンガポール)など14社、非通知対象法域の海外取引所としてBYBIT・BINANCE・Bitget・MEXC・OKX・HTX・KUCOINなど15社を掲載しています(2026年9月22日確認)。送付先ごとに送付できる暗号資産のグループが決まっており、XRP・LTC・SOLなどは非通知対象法域の取引所とプライベートウォレット(グループB)にのみ送付できます。
MEXC・BingXへ送るときの確認手順
- 01送金元の国内取引所の送付先一覧(アドレス登録画面)に、送りたい海外取引所の名前があるかを確認する
無い取引所には直接送れない
- 02海外取引所側で、入金する暗号資産とネットワーク(チェーン)を選び、入金アドレスと必要ならメモ・タグを取得する
国内取引所側で同じ暗号資産・同じネットワークが送付に対応しているか確認する
- 03国内取引所で送付先を登録する
トラベルルールの受取人情報(受取人の氏名・受取側の取引所名など)を入力する項目があり、入力誤りは反映遅延や返却の原因になる
- 04初回は少額で送り、海外取引所への着金と反映時間を確認してから本送金する
送金はブロックチェーン上で取り消せない
- 05海外取引所から国内取引所へ戻すときも、受取側(国内取引所)で預入の確認が行われる
GMOコインは通知情報の確認完了まで反映に時間がかかる場合があると案内している
2026年9月22日時点で、MEXCはbitFlyerの送付先リストに掲載されている一方、GMOコインの公式ページでは「送付できない海外の暗号資産交換業者(例)」として名指しされています。同じ取引所でも送金元によって可否が分かれます。bitFlyerの送付先リストにBingXは掲載されていません。当サイトが確認した範囲では、bitFlyerからBingXへ直接送付することはできず、Coincheck・GMOコインについても各社の送金画面の一覧で確認が必要です。BingXの運営法人・所在地は公式サイトに一律の記載が無く、各取引所の審査上の扱いは当サイトでは判断できません。
自分のウォレット(プライベートウォレット)を経由する場合の注意点
bitFlyer・GMOコインは、MetaMaskなどの自分のウォレット(プライベートウォレット・アンホステッドウォレット)への送付を可能としています。国内取引所→自分のウォレット→海外取引所という経路は、規則上の通知対象を外れるものではなく、各社が認めている送付先へ送るという意味で正規の手順ですが、次の点に注意が必要です。
- 送付が2回になり、その分の送金手数料(ネットワーク手数料)と着金待ちの時間がかかる
- ウォレットのネットワーク設定を誤ると資産を失う。海外取引所の入金ネットワークとウォレットのネットワークを一致させる
- GMOコインは「当社判断により断る場合がある」と明記しており、プライベートウォレットへの送付が必ず通るとは限らない
- 自分名義のウォレットや取引所間の移動は暗号資産の譲渡ではないため、それ自体で所得税は生じない。ただし送付の履歴は取得価額の引き継ぎの記録として保存する
- 受取側の海外取引所も、自社の規約にもとづき入金元の確認や制限を行うことがある
なお、海外取引所の多くは金融庁の暗号資産交換業の登録を受けておらず、国内の利用者保護制度の対象外です。トラベルルールの送付先リストに載っていることは、その取引所の安全性や登録状況を示すものではありません。
本記事は2026年9月22日時点で金融庁・各取引所の公式ページで確認できた内容を整理したものです。送付先リストや対応方式は各社が随時変更するため、送金前に必ず各社の最新の案内を確認してください。当サイトは特定の送金経路や海外取引所の利用を勧めるものではありません。
よくある質問
Q. 国内取引所から海外取引所へ仮想通貨を送金できないのはなぜですか?
A. 2023年6月1日に施行されたトラベルルール(送付人・受取人情報の通知義務)への各社の対応で、国内取引所は事前に審査した送付先だけを選択式で表示する方式に切り替えているためです。bitFlyerは2025年7月30日から「暗号資産送付先リスト」にある取引所にのみ送付可能で、一覧に無い海外取引所へは直接送れません。
Q. トラベルルールとは何ですか?
A. 暗号資産交換業者が利用者の依頼で暗号資産を移転する際に、送付人と受取人に関する情報を受取側の業者へ通知する義務です。犯罪による収益の移転防止に関する法律の改正により2023年6月1日から施行され、FATFの基準にもとづきます。通知の対象は、日本と同等の規制がある法域(金融庁の2026年5月資料の58法域に、2026年8月3日適用で5法域を追加した63法域)に所在する業者への移転に限られます。
Q. bitFlyerからMEXCへ送金できますか?
A. 2026年9月22日時点で、bitFlyerの暗号資産送付先リストに「MEXC(セーシェル)」が非通知対象法域の海外取引所として掲載されており、リストにある取引所には送付できます。送付できる暗号資産はグループBの範囲です。一方、GMOコインは公式ページでMEXCを「送付できない海外の暗号資産交換業者(例)」に挙げています。リストは変更されるため送金前に最新の案内を確認してください。
Q. bitFlyerからBingXへ送金できますか?
A. 2026年9月22日時点で、bitFlyerの暗号資産送付先リストにBingXは掲載されていません。bitFlyerはリストにある取引所・金融機関にのみ送付可能としているため、当サイトが確認した範囲では直接送付できません。Coincheck・GMOコインについては、各社の送金画面に表示される送付先一覧で確認してください。
Q. MetaMaskなど自分のウォレットを経由すれば海外取引所へ送れますか?
A. bitFlyer・GMOコインはプライベートウォレットへの送付を可能としており(GMOコインは当社判断により断る場合ありと明記)、自分のウォレットから海外取引所へ送る経路は各社が認めている送付先へ送る正規の手順です。ただし送付が2回になる分の手数料と時間がかかり、ネットワークの選択ミスは資産の喪失につながります。
Q. TRUSTとSygnaの違いで送金できないことがありますか?
A. あります。通知対象法域の業者同士で通知システムが異なると通知ができないため、Sygna Hubを採用するGMOコインは、TRUSTを採用するbitFlyer・Coincheckへの送付を「できない宛先」としています。国内取引所間の送金でも、採用システムの違いで送れない組み合わせがあります。
Q. 海外取引所から国内取引所へ戻すときにも制限がありますか?
A. 受取側の国内取引所でも預入時にトラベルルールの通知情報の確認が行われます。GMOコインは、通知情報の確認完了まで反映に時間がかかる場合があり、入力誤りがあると預入を反映できない可能性があると案内しています。事前に受取側の取引所の案内を確認してください。
出典・確認先
- 金融庁|犯罪による収益の移転防止に関する法律施行令の一部を改正する政令案等に関するパブリックコメントの結果等について(2023年5月26日・トラベルルール2023年6月1日施行) →
- 金融庁|トラベルルールの対象法域について(2026年5月公表資料・PDF・追加5法域は2026年8月3日適用) →
- bitFlyer|トラベルルールで外部の取引所及び金融機関に送付できなくなることはありますか?(2025年7月30日にリスト選択制へ変更) →
- bitFlyer|暗号資産送付先リストはどこで確認できますか?(送付先リスト・2026年9月22日確認) →
- Coincheck|トラベルルールとは何ですか?(TRUST採用・2026年8月3日時点の対象法域一覧を掲載) →
- GMOコイン|トラベルルールについて(Sygna Hub採用・送付できない宛先の例にMEXC・Bybit・OKX等を明記) →
- 金融庁|暗号資産関係(無登録業者の警告一覧・注意喚起) →
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