ステーブルコインは、米ドルや日本円などの法定通貨と1対1の価値を保つように設計された暗号資産(日本の法律上は「電子決済手段」)です。海外取引所ではテザー(USDT)やUSDコインなど米ドル建てが取引の基軸ですが、日本では2025年10月に資金移動業型のJPYC、2026年6月に信託型のJPYSCと、円建てのステーブルコインが相次いで始まりました。
この記事では、JPYCとJPYSCの仕組みと違い、2026年9月7日に発表されたJPYSCの裏付け資産の国債運用、海外取引所で使うUSDTとの関係を、発行体の公式発表で確認できる範囲で整理します。特定のステーブルコインの購入や保有を勧めるものではありません。
円建てステーブルコインとは?日本の法律上の位置づけ
日本では、2023年6月に施行された改正資金決済法で、法定通貨建てのステーブルコインが「電子決済手段」として定義され、発行できる主体が銀行・資金移動業者・信託会社(信託銀行)に限定されました。ビットコインなどの「暗号資産」とは法律上の区分が異なります。
| 区分 | 内容 | 該当する円建てステーブルコイン |
|---|---|---|
| 1号電子決済手段 | 銀行または資金移動業者が発行する、法定通貨建てで送金・償還に使える財産的価値 | 資金移動業型(JPYC)。資金移動業の種別に応じた送金額の上限がある |
| 2号電子決済手段 | 不特定の者との間で1号電子決済手段と交換できる財産的価値(海外で発行されたステーブルコインなどを想定) | — |
| 3号電子決済手段 | 特定信託会社(信託会社・信託銀行)が発行する特定信託受益権 | 信託型(JPYSC)。利用者の資金を信託財産として分別保全し、発行・償還額に法定の上限がない |
※ 区分の番号は資金決済法第2条の電子決済手段の号数。銀行が発行するものも1号に含まれます。海外で発行された米ドル建てステーブルコインを国内で取り扱うには、電子決済手段等取引業の登録が必要です。
JPYCとJPYSCの違い:発行体・上限・使える場所
2026年9月11日時点で、日本円建てで実際に発行・流通している主なステーブルコインはJPYCとJPYSCです。発行体の公式サイトで確認できる違いを並べます。
| 項目 | JPYC | JPYSC |
|---|---|---|
| 発行体 | JPYC株式会社(資金移動業者) | SBI新生信託銀行(信託型) |
| 法律上の型 | 1号電子決済手段(資金移動業型) | 3号電子決済手段(信託型) |
| 提供開始 | 2025年10月27日 | 2026年6月24日(販売はSBI VCトレード) |
| 対応チェーン | イーサリアム、ポリゴンなど複数のパブリックチェーン | イーサリアム(ERC-20)。現在はSBI VCトレード口座内限定で、外部への入出庫は未対応 |
| 発行・償還の上限 | 1回100万円以下(資金移動業の上限) | 法定の上限なし |
| 手数料 | 発行・償還は手数料なし(公式サイト表示) | 売買スプレッド・取引手数料・入出金手数料なし(SBI VCトレード表示) |
| 価格 | 1JPYC=1円で発行・償還 | SBI VCトレード内で1JPYSC=1円固定 |
※ JPYCは「JPYC EX」で本人確認のうえ発行・償還。JPYSCはSBI VCトレードの口座内で売買し、レンディング(貸出)サービスも2026年7月に始まっています。条件は変更される場合があるため各公式サイトで確認してください。
JPYCはパブリックチェーン上で誰でもウォレットに送れるため、Web3サービスや決済での利用が想定されています。一方JPYSCは、現時点ではSBI VCトレードの口座内でしか使えず、外部ウォレットへの送付には対応していません。「オンチェーンで自由に動かせるか」が、いま両者を分ける最も大きな違いです。
JPYSCの国債運用とは?2026年9月7日に裏付け資産10億円を短期国債へ
SBI新生信託銀行とSBI VCトレードは2026年9月7日、JPYSCの裏付け資産のうち10億円について、残存期間3か月以内の短期国債での運用を始めたと発表しました。発表時点のJPYSCの発行残高は約201億円相当で、JPYSCレンディングの申込分は約69億円相当としています。
背景には、2026年6月1日に施行された改正資金決済法と関係法令があります。これにより、信託型ステーブルコインの裏付け資産は、要求払預貯金に加えて、発行額の50%を上限に残存期間3か月以内の国債や定期預金で運用できるようになりました。今回の10億円は発行残高の約5%にあたり、発行量が減るわけではなく、価値を支える資金の管理・運用先の一部が預金から国債に変わったという意味です。
裏付け資産の国債運用で得られる利息は発行体側の収益で、JPYSCの保有者に利息や配当として支払われるものではありません。ステーブルコインを持っているだけで利回りが付くわけではない点は、米ドル建てのUSDTなども同じです。
海外取引所のUSDTと円建てステーブルコインの関係・入金と税金の注意点
海外取引所の現物・先物取引は、USDTなど米ドル建てステーブルコインを基軸通貨として建てられています。円建てステーブルコインが始まっても、海外取引所での取引の単位が円に変わるわけではありません。海外取引所の利用者にとっての関係を整理します。
- 海外取引所の多くは日本円の直接入金に対応していない。日本円→暗号資産(またはUSDT)→海外取引所という経路が基本で、円建てステーブルコインを入金手段として受け付けているかは取引所ごとに異なる。入金対応銘柄とネットワークを各取引所の入金画面で確認する
- 円建てステーブルコインを海外取引所へ送る場合も、送金ネットワーク・アドレスの取り違えは戻らない。対応していない銘柄を送ると資産を失う
- USDTは米ドル建てのため、円換算では為替の影響を受ける。円建てステーブルコインは円換算の価値が固定される一方、海外取引所の取引ペアとしては現時点で一般的ではない
- ステーブルコインも「電子決済手段」または「暗号資産」として税務上の扱いがあり、暗号資産との交換や円への換金は損益計算の対象になり得る。記録を残し、判断に迷う場合は税務署・税理士に確認する
- 海外取引所で使う前に、その取引所が対応する入金銘柄・ネットワークを確認する(対応していなければ送らない)
- ステーブルコインの発行体・裏付け資産・償還の条件を公式サイトで確認する(発行体が誰か分からないものは使わない)
- 少額で送金→反映→出金までを一度試してから金額を増やす
よくある質問
Q. 円建てステーブルコインとは何ですか?
A. 日本円と1対1の価値を保つように設計されたデジタル通貨で、日本の資金決済法では「電子決済手段」として定義されています。発行できるのは銀行・資金移動業者・信託会社(信託銀行)に限られ、2026年9月時点ではJPYC(資金移動業型)とJPYSC(信託型)が発行・流通しています。
Q. JPYCとJPYSCの違いは何ですか?
A. JPYCはJPYC株式会社が発行する資金移動業型で、イーサリアムなどのパブリックチェーン上で誰でもウォレットに送れますが、発行・償還は1回100万円以下という上限があります。JPYSCはSBI新生信託銀行が発行する信託型で上限はありませんが、2026年9月時点ではSBI VCトレードの口座内でのみ使え、外部への入出庫は未対応です。
Q. JPYSCの国債運用とは何ですか?
A. 2026年9月7日、SBI新生信託銀行とSBI VCトレードは、JPYSCの裏付け資産のうち10億円を残存期間3か月以内の短期国債で運用し始めたと発表しました。2026年6月1日施行の改正資金決済法で、発行額の50%を上限に短期国債・定期預金での運用が認められたことによるものです。運用益は保有者に配当されません。
Q. 海外取引所に円建てステーブルコインで入金できますか?
A. 取引所ごとに対応が異なります。海外取引所の基軸は米ドル建てのUSDTなどで、円建てステーブルコインを入金手段として受け付けているかは各取引所の入金画面で対応銘柄・ネットワークを確認する必要があります。対応していない銘柄を送ると資産を失います。
Q. ステーブルコインを持っているだけで利息はつきますか?
A. つきません。JPYSCの裏付け資産の運用益は発行体側の収益で、保有者に配当されません。レンディングなどのサービスを別途利用した場合の利率は、そのサービスの条件と発行体・提供者のリスクを個別に確認してください。
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