仮想通貨(暗号資産)の税金は「利益がいくらから」かかるのか。結論から言うと、利益が1円でも出れば所得税の課税対象ですが、会社員など給与を1か所から受けている人は、仮想通貨を含む給与以外の所得の合計が年間20万円以下なら所得税の確定申告は不要です。ただし住民税の申告は20万円以下でも必要で、「20万円以下なら何もしなくてよい」わけではありません。
この記事では、国税庁のタックスアンサーと「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」(令和7年12月最終改訂)をもとに、申告が必要になる金額の線引き、所得税と住民税を合わせた税率の早見表、課税されるタイミング、持っているだけの場合、そして海外取引所(MEXC・BingXなど)で出た利益の扱いを、2026年9月16日時点の法令で整理します。
仮想通貨の税金はいくらから?会社員は「20万円ルール」、住民税は別
所得税法上、暗号資産の売却などで生じた利益は原則として雑所得(その他雑所得)に区分され、給与などと合算して税率が決まる総合課税の対象です(国税庁FAQ 2-2)。所得税がかかるかどうかに「いくらから」という下限はなく、利益が出ればその年の所得になります。ただし、確定申告をしなくてよい人の要件が別に定められています。
| 立場 | 確定申告が必要になる条件 | 補足 |
|---|---|---|
| 会社員・公務員(給与1か所) | 給与所得・退職所得以外の所得(仮想通貨の利益を含む)の合計が年間20万円を超える | 20万円以下なら所得税の申告は不要。ただし住民税の申告は必要(下記) |
| 給与2,000万円超の人 | 金額に関係なく確定申告が必要 | 20万円ルールは使えない |
| 他の理由で確定申告する人 | 医療費控除・ふるさと納税(ワンストップ特例を使わない)などで申告する場合は20万円以下の利益も含めて申告する | 20万円ルールは「申告をしない場合」の要件 |
| 給与のない人(個人事業主等) | 所得の合計が基礎控除などの所得控除の合計を超える場合 | 20万円ルールは給与所得者向けの規定で、そのままは当てはまらない |
※ 出典: 国税庁 タックスアンサー No.1900(令和8年4月1日現在法令等)。20万円は「利益(収入から譲渡原価・手数料などの必要経費を引いた額)」で判定します。
20万円ルールは所得税(確定申告)の規定で、住民税には同じ規定がありません。仮想通貨の利益が20万円以下で所得税の確定申告をしない場合でも、市区町村へ住民税の申告が必要です。確定申告をすればその内容が市区町村へ共有されるため、住民税の申告を別にする必要はありません。住民税の所得割の標準税率は10%(道府県民税4%・市町村民税6%)です(総務省)。
なお、その年の暗号資産取引の収入金額(売却額の合計)が300万円を超える場合は、帳簿書類を保存していれば原則として事業所得、保存がなければ雑所得(業務に係る雑所得)に区分されます(FAQ 2-2・令和7年12月更新)。専業に近い規模で取引している人は、所得区分そのものが変わる可能性がある点に注意してください。
仮想通貨の税率早見表:所得税5〜45%+住民税10%(最大約55%)
総合課税では、給与所得など他の所得と仮想通貨の利益を合計し、所得控除を差し引いた「課税される所得金額」に対して、次の速算表で所得税を計算します。住民税は所得割がおおむね一律10%なので、合計の税率は15%から55%の間になります(復興特別所得税は別途)。
| 課税される所得金額 | 所得税率 | 控除額 | 住民税10%を合わせた税率 |
|---|---|---|---|
| 1,000円〜194万9,000円 | 5% | 0円 | 約15% |
| 195万円〜329万9,000円 | 10% | 9万7,500円 | 約20% |
| 330万円〜694万9,000円 | 20% | 42万7,500円 | 約30% |
| 695万円〜899万9,000円 | 23% | 63万6,000円 | 約33% |
| 900万円〜1,799万9,000円 | 33% | 153万6,000円 | 約43% |
| 1,800万円〜3,999万9,000円 | 40% | 279万6,000円 | 約50% |
| 4,000万円以上 | 45% | 479万6,000円 | 約55% |
※ 所得税額 = 課税される所得金額 × 税率 − 控除額。これに復興特別所得税(所得税額の2.1%・令和9年1月1日以後の所得は1.1%)が加わります。住民税の所得割は標準税率10%(都道府県4%+市区町村6%)で、自治体により若干異なります。
計算例:給与のある会社員が仮想通貨で100万円の利益を出した場合
給与所得のみで課税される所得金額が400万円の人が、仮想通貨で100万円の利益(必要経費を引いた後)を得たとします。課税所得は500万円になり、速算表の「330万円〜694万9,000円」の区分で所得税は 500万円 × 20% − 42万7,500円 = 57万2,500円です。仮想通貨の利益がない場合の所得税は 400万円 × 20% − 42万7,500円 = 37万2,500円なので、利益100万円によって増える所得税は20万円、住民税はおおむね10万円で、合計約30万円(利益の約30%)が増える計算です(復興特別所得税は除く)。
仮想通貨の税額は、利益の額だけでなく給与など他の所得と所得控除で変わります。上の表は「自分の課税所得がどの区分に入るか」を確認するためのもので、同じ100万円の利益でも、課税所得195万円未満の人なら約15万円、1,800万円超の人なら約50万円と、増える税額は大きく違います。
2026年7月15日に成立した改正金融商品取引法により、暗号資産の利益は将来、税率20%の申告分離課税へ移行する見込みですが、適用は早ければ2028年1月1日からで、2026年・2027年の取引には現行の総合課税が適用されます。分離課税の開始時期は次のコラムで整理しています。
課税されるタイミング:売却・交換・決済で利益が確定、持っているだけなら非課税
「仮想通貨を持っているだけで税金がかかるのか」という疑問は多いですが、保有している暗号資産の値上がり(含み益)は課税されません。所得が生じるのは、次のように暗号資産を「譲渡」または「取得」した時点です(国税庁FAQ 1-1〜1-3、1-7)。
| 取引 | 所得の計算 | FAQ |
|---|---|---|
| 売却(日本円に換金) | 売却価額 − 譲渡原価(1単位あたりの取得価額 × 数量)− 手数料 | 1-1 |
| 商品・サービスの購入 | 商品の価額(=暗号資産の譲渡価額)− 譲渡原価 | 1-2 |
| 暗号資産同士の交換 | 取得した暗号資産の時価(=譲渡価額)− 譲渡原価。BTC→ETH・BTC→USDTなど、日本円にしていなくても課税 | 1-3 |
| マイニング・ステーキング等の受取 | 受け取った時点の時価が収入。売却時は別に譲渡益を計算 | 1-7 |
| 先物(証拠金取引)の決済 | 決済ごとの損益を集計。FXのような申告分離課税の対象外で、総合課税 | 2-12 |
| 保有・自分のウォレットへ送金 | 所得は生じない(所有者が変わらない移動は譲渡ではない) | — |
※ 出典: 国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」令和7年12月最終改訂。譲渡原価は暗号資産の種類ごとに総平均法または移動平均法で計算し、届出をしない場合は総平均法になります(FAQ 2-4・2-5)。
海外取引所では、ビットコインをいったんUSDT(ステーブルコイン)に替えてから別の銘柄を買う流れが一般的です。この「BTC→USDT」の交換は暗号資産同士の交換にあたり、その時点でBTCの含み益が実現したものとして所得を計算します(FAQ 1-3)。日本円に戻していなくても課税対象になる点が、最も見落とされやすいポイントです。
損失が出た年については、雑所得の損失は給与所得など他の所得と通算できません(FAQ 2-11)。雑所得の損失は翌年以降に繰り越すこともできません。同じ年の他の雑所得(別の暗号資産の利益など)とは相殺できます。
海外取引所(MEXC・BingXなど)の利益も日本の税金の対象
日本の居住者は、所得が生じた場所を問わず全世界の所得に日本の所得税がかかります。MEXCやBingXなど海外取引所で出た利益も、国内取引所と同じ雑所得として合算して申告します。海外取引所は国内取引所のような年間取引報告書を発行しないことが多いため、次の準備が必要です。
- 取引履歴(現物の約定・先物の決済・入出金・手数料)をCSVなどで年ごとに保存する。取引所を撤退・閉鎖で使えなくなる前に取得しておく
- USDT建ての損益は、決済した時点の為替レートで日本円に換算して集計する。換算レートの取り方を年内で統一する
- 暗号資産の種類ごとに総平均法で1単位あたりの取得価額を出す。移動平均法にしたい場合は取得した年の申告期限までに届出書を提出する
- 国内取引所と海外取引所をまたぐ送金は「移動」で、それ自体は所得にならない。ただし送金後に交換・売却すれば課税されるので、取得価額を引き継いで管理する
- 利益が20万円以下でも住民税の申告が必要。20万円を超えたら翌年2月16日〜3月15日に確定申告する
「海外取引所なら把握されないのではないか」という点については、2026年1月に施行された暗号資産の自動的情報交換(CARF)と、国税庁が公表している暗号資産の税務調査の実績を次のコラムで整理しています。
海外取引所の仮想通貨の利益はバレる?CARFと税務調査の実態 →
本記事は国税庁の公表資料に基づく一般的な説明で、個別の税額計算や申告の代行はできません。金額が大きい場合や所得区分の判断に迷う場合は、税務署または暗号資産に詳しい税理士に確認してください。
よくある質問
Q. 仮想通貨の税金はいくらからかかりますか?
A. 利益が出れば金額にかかわらず所得税の課税対象です。ただし、給与を1か所から受け年末調整を受けている会社員などは、仮想通貨を含む給与以外の所得の合計が年間20万円以下なら所得税の確定申告は不要です(国税庁 No.1900)。住民税は20万円以下でも市区町村への申告が必要です。
Q. 仮想通貨の利益が20万円以下なら税金は一切かかりませんか?
A. 所得税の確定申告が不要になるだけで、住民税の申告と納税は必要です。また、医療費控除などで確定申告をする場合は、20万円以下の利益も含めて申告します。給与収入が2,000万円を超える人も金額にかかわらず申告が必要です。
Q. 仮想通貨を持っているだけで税金はかかりますか?
A. かかりません。保有している暗号資産の値上がり(含み益)は課税されず、売却・他の暗号資産との交換・商品購入などで譲渡した時点、またはステーキングなどで暗号資産を受け取った時点で所得が生じます(国税庁FAQ 1-1〜1-3、1-7)。
Q. 仮想通貨の税率は何%ですか?
A. 原則として雑所得の総合課税で、所得税は課税所得に応じて5%〜45%の7段階(国税庁 No.2260)、これに住民税の所得割約10%と復興特別所得税が加わります。合計はおおむね15%〜55%で、給与など他の所得と合算した課税所得の区分で決まります。
Q. ビットコインをUSDTに替えただけでも税金はかかりますか?
A. かかります。暗号資産同士の交換は、保有していた暗号資産を譲渡して別の暗号資産を購入した扱いになり、交換時点の時価と取得価額の差額が所得になります(国税庁FAQ 1-3)。日本円に戻していなくても課税対象です。
Q. 海外取引所(MEXC・BingXなど)の利益も申告が必要ですか?
A. 必要です。日本の居住者は全世界の所得に日本の所得税がかかり、海外取引所の利益も国内取引所と同じ雑所得として合算します。海外取引所は年間取引報告書を出さないことが多いため、取引履歴を自分で保存し、USDT建ての損益は決済時の為替レートで円換算します。
Q. 仮想通貨の損失は給与と相殺できますか?
A. できません。雑所得の計算上生じた損失は、給与所得など他の所得と通算できず、翌年への繰越もできません(国税庁FAQ 2-11)。同じ年の他の雑所得(別の暗号資産の利益など)とは相殺できます。
出典・確認先
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