JPYCの税金はどうなるのか。結論から言うと、JPYCは日本の法律上「暗号資産」ではなく「電子決済手段」で、1JPYC=1円で発行・償還される限り、日本円との間で損益は生じません。一方、ビットコインなどの暗号資産とJPYCを交換した時点では暗号資産側の損益が確定し、取引所で1円と異なる価格でJPYCを売買した場合や、韓国ウォン・USDTなどと交換した場合は、その差額が所得計算の対象になり得ます。
この記事では、国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」(令和7年12月最終改訂)に電子決済手段についてどこまで書かれているかを確認したうえで、個人がJPYCを使う場面ごとの考え方を整理します。個人の所得税について電子決済手段を直接扱ったQ&Aは同FAQにないため、本記事は暗号資産の取扱いと電子決済手段の法的性質から導かれる一般的な整理であり、個別の税額判断や申告の代行はできません。金額が大きい場合は税務署または税理士に確認してください。
JPYCの税金の前提:暗号資産ではなく「電子決済手段」で、1円との交換に損益はない
資金決済法は、法定通貨建てで発行され同額で償還されるステーブルコインを「電子決済手段」と定義し、ビットコインなどの「暗号資産」とは区別しています。JPYCは第二種資金移動業者であるJPYC株式会社が発行する1号電子決済手段で、発行体が1JPYC=1円での償還義務を負っています。国税庁FAQも「電子決済手段」を資金決済法の1号〜3号電子決済手段と定義したうえで、暗号資産とは別の項目を設けています。
| 項目 | 内容 | FAQ番号 |
|---|---|---|
| 取得価額(法人税) | 券面額に基づく価額が税務上の取得価額。電子決済手段は要求払預金に類似する性格を持ち、金銭債権に該当すると考えられる | 3-2-1 |
| 譲渡時(法人税) | 第三者へ譲渡した対価と帳簿価額に差額があれば、その事業年度の益金または損金に算入 | 3-2-2 |
| 期末時(法人税) | 期末の時価評価は不要(金銭債権は期末時価評価の対象外) | 3-2-3 |
| 外貨建て(法人税) | 外国通貨建ての電子決済手段は、期末時換算法または発生時換算法で円換算 | 3-2-4 |
| 消費税 | 2023年6月1日以後の電子決済手段の譲渡は、支払手段等の譲渡として非課税 | 6-1(参考3) |
| 個人の所得税 | 電子決済手段を直接扱ったQ&Aはない。暗号資産の売却・交換・使用の取扱い(1-1〜1-3など)が示されている | — |
※ 出典: 国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」令和7年12月最終改訂。法人税の項目は法人が保有する場合の取扱いですが、「券面額が取得価額」「1円で償還される金銭債権に近い性質」という整理は、個人が1円で発行・償還する場面の考え方の参考になります。
JPYC EXで10万円を振り込んで100,000 JPYCを受け取り、後日100,000 JPYCを償還して10万円を受け取った場合、円建ての価値は変わらないため所得は生じません。含み益もありません。この点が、円に換金した時点で値上がり益が課税される暗号資産との最も大きな違いです。
JPYCで税金が関係する3つの場面:暗号資産との交換・1円以外での売買・外貨との交換
JPYCそのものの値動きはありませんが、JPYCを「他の資産と交換する」場面では、相手側の資産の損益や、1円との差額が問題になります。個人の場合に整理しておきたい場面は次の3つです。
| 場面 | 確認すること | 考え方の根拠 |
|---|---|---|
| ビットコインなど暗号資産→JPYCに交換 | 交換した時点で暗号資産を「譲渡」した扱い。受け取ったJPYCの円価値(=譲渡価額)と暗号資産の取得価額の差額が雑所得などの所得 | 国税庁FAQ 1-1・1-3(暗号資産の売却・交換) |
| JPYC→暗号資産に交換 | 暗号資産を購入した扱い。支払ったJPYCの円価値が、その暗号資産の取得価額になる。JPYC側に損益は生じない | FAQ 1-5(暗号資産の取得価額) |
| 取引所・DEXで1円以外の価格でJPYCを売買 | 1円で発行したJPYCを1.2円で売れば差額が利益。1.2円で買ったJPYCを1円で償還すれば差額が損失。個人の所得区分は雑所得と考えられるが、FAQに直接の記載はない | 電子決済手段は金銭債権に近い性質(FAQ 3-2-1)。区分は要確認 |
| Upbitなどで韓国ウォン・USDTと交換 | 円建てのJPYCと外貨・外貨建てステーブルコインを交換した時点の為替レートで円換算し、差額を計算。USDTは暗号資産として別途損益計算の対象 | FAQ 1-3(暗号資産同士の交換)・海外取引所の利益も日本で課税 |
| 店舗・サービスでの決済(1JPYC=1円) | 円で支払ったのと同じで、JPYC側に損益は生じない | 電子決済手段の性質 |
※ 「考え方の根拠」は国税庁FAQの該当項目と電子決済手段の法的性質から導いた一般的な整理です。1円以外での売買益の所得区分など、FAQに明示のない点は税務署・税理士に確認してください。
海外取引所でビットコインをJPYCやUSDTに替えた場合、日本円に戻していなくても、その時点でビットコインの含み益が実現したものとして所得を計算するのが、暗号資産同士の交換(国税庁FAQ 1-3)の考え方を当てはめた整理です。JPYCに替えれば円建てで価値が固定されるため「利益確定を先送りできる」ように見えますが、税務上はその交換の時点で暗号資産側の利益が確定しています。
JPYCの確定申告は必要?20万円ルール・住民税・損失の扱い
JPYCの利用自体に所得が生じない場合、JPYCについて確定申告をする必要はありません。所得が生じるのは前の節の場面(暗号資産との交換、1円以外での売買、外貨との交換)で、その所得は暗号資産の利益と同じく、給与などと合算する総合課税の雑所得として扱われるのが基本的な考え方です。申告の要否は次の基準で判断します。
- 給与を1か所から受ける会社員は、JPYC関連を含む給与以外の所得の合計が年20万円を超えると所得税の確定申告が必要(国税庁 タックスアンサー No.1900)
- 20万円以下で確定申告をしない場合でも、住民税の申告は必要
- 暗号資産の損益とJPYC関連の損益は、同じ年の雑所得の中で相殺できる。雑所得の損失は給与など他の所得と通算できず(FAQ 2-11)、雑所得には繰越控除の規定がないため翌年にも繰り越せない
- JPYC EXの発行・償還履歴、取引所の取引履歴・入出金履歴は年ごとに保存する。海外取引所は年間取引報告書を出さないことが多い
- 1円以外で売買した場合や外貨と交換した場合は、その時点のレートの記録を残し、円換算の方法を年内で統一する
所得税の税率(5〜45%)と住民税10%を合わせた早見表、20万円ルールの詳細は次のコラムにまとめています。2026年7月に成立した改正金融商品取引法による申告分離課税20%は暗号資産が対象で、適用は早くても2028年からです。電子決済手段であるJPYCがどう扱われるかは、施行に向けた法令・通達で確認する必要があります。
本記事は国税庁の公表資料と発行体の公式資料に基づく一般的な説明で、個人の所得税における電子決済手段の取扱いは国税庁FAQに直接の記載がありません。個別の税額計算や申告の代行はできないため、金額が大きい場合や判断に迷う場合は、税務署または暗号資産に詳しい税理士に確認してください。
よくある質問
Q. JPYCを持っているだけで税金はかかりますか?
A. かかりません。JPYCは1JPYC=1円で発行・償還される電子決済手段で、値上がり益がなく、保有しているだけで所得は生じません。国税庁FAQでも電子決済手段は要求払預金に類似する金銭債権と整理されています(法人税の項目3-2-1)。
Q. JPYCを日本円に換金(償還)すると税金はかかりますか?
A. 1円で発行したJPYCを1円で償還する限り、損益が生じないため所得税はかかりません。1円と異なる価格でJPYCを取引所などで買っていた場合は、償還額との差額が損益になります。
Q. ビットコインをJPYCに交換すると税金はかかりますか?
A. かかります。暗号資産を電子決済手段に交換した時点で暗号資産を譲渡した扱いになり、受け取ったJPYCの円価値とビットコインの取得価額の差額が所得(原則として雑所得)になります(国税庁FAQ 1-1・1-3の考え方)。日本円に戻していなくても課税対象です。
Q. JPYCの利益は確定申告が必要ですか?
A. JPYC関連の所得(暗号資産との交換、1円以外での売買、外貨との交換で生じた差額)を含む給与以外の所得が年20万円を超える会社員は所得税の確定申告が必要です。20万円以下でも住民税の申告は必要です。1円で発行・償還しただけなら所得は生じません。
Q. JPYCは分離課税20%の対象になりますか?
A. 2026年7月に成立した改正金融商品取引法による申告分離課税20%は暗号資産が対象で、適用は早くても2028年1月からです。電子決済手段であるJPYCの取扱いは、施行に向けて整備される法令・通達で確認する必要があり、2026年9月18日時点で当サイトが確認できる公的資料に明示はありません。
Q. JPYCの取引に消費税はかかりますか?
A. 国税庁FAQによると、2023年6月1日以後に国内で行われる電子決済手段の譲渡は、支払手段等の譲渡として消費税が非課税です(FAQ 6-1 参考3)。
出典・確認先
- 国税庁|暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)令和7年12月最終改訂(PDF) →
- 国税庁|タックスアンサー No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人(令和8年4月1日現在法令等) →
- 国税庁|タックスアンサー No.1524 暗号資産を使用することにより利益が生じた場合の課税関係 →
- 国税庁|暗号資産に関する税務上の取扱い →
- JPYC株式会社|契約締結前交付書面兼説明書(資金移動業)(PDF・上限額・手数料・履行保証金・対応チェーン) →
- JPYC EX FAQ|今までのJPYC PrepaidとJPYCの違いは何ですか? →
- 金融庁|暗号資産関係(無登録業者の警告一覧・注意喚起) →
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